得野けちべえ No,257

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本日は、私の作った大人の昔話です。最後まで読んでみてください。

 

昔々、あるところにたいそうケチで強欲、情けも涙もないくせに強い物にはヘコヘコ頭を下げ、自分より弱い者には鬼のように強く当たり自分の得になることしか考えない得野悪三(とくのわるぞう)と言う、とんでもない小役人がおったそうじゃ。また、嫁は嫁で小役人に輪をかけたような根性悪。もう世の中の腹黒く、意地汚い、卑劣で強欲で悪人の代表のような夫婦じゃった。

さあ、その夫婦にも子供ができたんじゃが、生まれた子ももちろん腹黒く、夫婦に輪をかけた悪童じゃった。そして、さらにひどいことに、この子は天邪鬼(あまのじゃく)で人と同じことや自分の思うことを素直にやれないという変人ときた。まあ、生まれたときからの根っからの悪人。名前は、得野ケチべえ

その子がまだ、こんまいとき、戦(いくさ)や飢饉で村ん衆の気持ちは荒んで、子たちの間ではイジメやカツアゲが日常茶飯事じゃった。今日も今日とて、5人ほどの悪童たちが小さい子を囲んでイジメて銭を巻き上げようとしておった。その時、通りかかった得野ケチべえ、心の中で「何やおもろい事やってやがる。でもちょっと待てよ、わしゃ、こいつらと同じことはしとうないわい。」と思ったとたん、悪童たちに向かって「こら、やめんかい!」と突っかかっていき、ぼこぼこに殴られながらも最後まで抵抗するので、悪童たちも退散していったそうじゃ。こんなことが来る日も来る日も続き、悪童たちからも「ケチべえがおるなら、ここらでのカツアゲは、やめよう。」と言うことになり、その村ではイジメやカツアゲは、なくなってしもうた。

また、ケチべえが青年になったころ、飢饉があり村中の食いもんが減って、村ん衆は食うや食わず、それでもケチべえのオヤジ得野悪三は、鬼のように年貢を集め、村ん衆が食べ物を分けてもらいたいと悪三の家に押し掛けたときも「帰れ!」とばかりに足蹴にしたそうじゃ。それを見とったケチべえ、「わしも、弱い者いじめは大好きじゃ。じゃが、人のやってることを真似するのは、好かん。おもろない。」と、泣きながら帰る村ん衆たちに少しずつじゃが、自分の家の蔵に置いてある食べ物を分けてやったそうな。

そんなこんなで、ケチべえも大人になり、親の後を継いで小役人になった時、上役の代官には小役人はそろって金品を届け、村や町の商人たちもせっせと付け届けをするのが習わしじゃった。ところが、ケチべえは「何で、あんなやつに付け届けをせにゃらんのじゃ。わしは、人のやる事と同じことは、しとうないでのお。」と言って、一人知らん顔。また、周りは”おでえかんさま”(お代官様)に金品を届けるため、普通以上に年貢を取り立てたり、商人は値を釣り上げて悪どい商売をしてるのに、ケチべえだけは、「おみゃあらと同じことは、けたくそ悪りいけん、するかい!」と逆に年貢を減らして自分で立て替えることもあったんじゃと。根っからの根性悪で意地汚く、腹黒く卑劣なケチべえじゃったが、周りと同じことは好かん、とばかりに人がイジメてたら、いじめるやつを懲らしめる。弱い者にひどい仕打ちをしてたら助ける。強いものになびいて自分を引き立ててもらう連中を見ると、絶対に同じことはしない。その他にも自分は役人でえらいんじゃ、自分は豪商で金持ちじゃ、とばかりに村ん衆を奴隷のように扱うとるんを見ると、逆に百姓も貧乏人も対等に扱い、ほかの連中がお代官様に付け届けをする代わりに、村ん衆が病気になった時や大雨台風で家や畑に大きな被害が出たら、自腹で見舞いを出すなど、一から十まで親の悪三や周りの役人、悪どい商人らがやっていることと反対のことをする変わった男じゃった。

結局、ケチべえ、死ぬまで、そんなことばかりするもんで、代官からは目の敵にされ出世などままならず、自分の財産も村ん衆のために使って、蔵には大した財産ものうなってしもうた。死ぬ間際にも「わしゃ、自分のことはようわかっちょる。根性悪で腹黒く、弱いもんいじめも好きで自分さえ良かったらええちゅう強欲じゃ。しかも人のすることと同じことをするのが大嫌いな変わりもん。そんな性格は、死んでも変わらんわい!」と言いながら息を引き取りよったそうじゃ。

そんなケチべえが亡くなってしばらくすると、村に小さな石碑が立ったそうな。そして、石碑には、得野ケチべえではなく、「村に徳をほどこし、吉を運んだ恩人、徳野吉べえ翁の偉業の数々をここに記す。」と書かれておったそうじゃ。よくよく考えてみるとケチべえさん、自分では自分のことを悪党じゃ、腹黒いなどと思っているくらいじゃから、本当に悪い奴じゃったろうと思うが、やったことはと言うと、人を助け、弱い者の味方、強い物にも敢然と戦い、結局自分の財産を増やすより、人に施しをすることが多い人生じゃった。一体全体、ケチべえさんは、本当に悪い人間なんじゃろうか、それとも良い人間なんじゃろうか? わしには、いまだに分かりゃあせんが、皆の衆は、どう思わさるかのお?

 

(あとがき)

素晴らしい考えや優しい心を持っている人、だけど行動には表れない。逆にケチべえさんように根性悪で強欲、自分勝手な人間でもやっていることは素晴らしい。果たして、どちらが良い人でしょうか? まあ、考えてみたら、人間は、「何をやったか。」が一番大事で、「何を考えたか。」などはどうでもいい事のようにも思います。 偽善だろうが、ごまかしだろうが、また、取るに足らない小さなことでも良いので、何か人のお役に立つことをする、それも無理をしてではなく、できることをする。そのことができれば、みんな良い人ではないでしょうか。

さて、わが身を振り返ると、最近、世のため人のために何もしてないなあと思い、こんな話を書いてみました。今回は、自分に対する反省ですね。では次回は20日ころに更新します。

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