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先月の11日は、中国で独身の日と言って、ネットでの販売総額が一日で16兆円にもなる、すごいイベントです。その中でもアリババ集団の売上は9兆円と独身の日売上全体の半分以上を占めています。
そんなすごい企業グループを作ったのが、写真のジャック・マー氏です。(2011年に中国杭州で、当時のニッセン中国向けサイトがアリババによって表彰された時の写真)マー氏は1999年にEコマースのサイトを作ったのを手始めに金融やBtoB、企業向けWEBサービスなど、約20年で売上高12兆円以上の企業集団を作り上げ、中国経済の英雄と言える存在です。写真でもわかるように伸長162㎝と小柄で、どこにそんなバイタリティが潜んでいるのだろうと思いますが、やっていることは、まさに巨人と言えるすごさです。マー氏に代表されるように中国経済は、鄧小平の改革開放路線により民間企業が中心となって引っ張ってきました。
そんな中国に今、暗い影が忍び寄ろうとしています。アリババグループの金融企業が上場しようとすると、余りにも力がつき過ぎると政府から待ったがかかり、アリババは独占禁止法違反だと多額の罰金を取られ、マー氏も表舞台に出ないようになりました。その他の大手民間企業、売れ過ぎた芸能人、そのファンクラブ、他の突出した存在にもジワジワと政府共産党の締め付けが厳しくなっています。また、新疆ウイグルの人権問題や香港、台湾への締め付けなど、つまり、共産党政府=習近平に対する批判だけでなく、自分よりも力をつけそうな企業や人、また共産党の教えより夢中になりそうな集団を排除し、習近平体制をより堅固なものにしようという考えでしょうが、何となく、この道は「いつか来た道」に思えて仕方ありません。中国で1966年から1977年にかけて起こった悪名高い政治闘争である文化大革命(以下:文革)を思い出してしまいます。
私が中学生から大学生くらいまで中国では、当時の政治家、文化人たちがことごとく吊し上げに会い三角帽子をかぶらされて、自己批判させられると言った姿が日常茶飯事で、ニュースにもなりましたから、よく見ていました。文革はちょっと力の弱った毛沢東が自分の力を復活させるために起こした闘争で、今回の習近平は権力の絶頂にあるので、少し違う感じもしますが、個人に強烈に力を集中させようという意味では、同じように思えます。
文革の間には、数百万人から2000万人もの人たちが、殺戮され、宗教は弾圧、文化財も破壊され特にチベットでの弾圧、僧侶たち殺害等は、現政権の施策にも通じるものがあります。個人崇拝が進むと人々の自由は損なわれ、海外との軋轢も増してきます。自由にものも言えない、国のやることに反対もできない、その行き着く先は大弾圧か戦争でしょう。どちらにしても一般庶民が一番傷つくわけで、そんな事例は中国だけでも過去に山ほど存在しています。それでも個人の力が強くなればなるほど、それを維持するためには締め付けが必要になるのでしょう。そんな締め付けなどすべてやめて、宗教も政治も信条も自由にしたら、相手の力を削ぐなどと言う内向きの力を使わなくてもいいわけで、中国は今以上に発展するのは間違いないでしょう。でも、このような権力闘争は人間の性(さが)でもあります。
このような国家規模ではなくても企業の中の権力争い、学校や友達間でのリーダー争い、人が集まれば争いも起こると言われています。だからこそ、話し合いの場やみんなで選ぶ選挙などの方法で争いを避けてきたのですが、そんな歴史の知恵も今の中国や北朝鮮、ロシアでは通用しなくなりました。話し合いなど問答無用の国々と自由に意見を言い合おうという国々が、それぞれに同盟を組んで大戦争!・・・・・などと言う最悪のシナリオだけは避けてもらいたいですね。大きな国の大主席に小さな国の小市民のせめてもの願いです。習さん、頼んまっせ。
(あとがき)
写真の2011年は、中国ではまだまだ欧米や日本に学ぼうという姿勢が強く、経済界や人々は活気に満ち溢れていました。現地のマスコミや企業人と話しても熱量が日本とは大違いでした。その内、中国はすごいことになるだろうなと感じていましたが、何とそれからあっという間に欧米を抜き、世界の強国になりました。日本がボーっとして30年間給料も変わらない間、世界は様変わりです。コロナで世界と隔絶されてもいるし、その内、ガラパゴス島のように取り残され何も世界に通用しない、そんな国になりはしないかと危惧しています。頑張れにっぽん!